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ナルダが教えてくれたこと/スチュアートデイヴィッド 


2001.07.03
Tue
18:26

この本を読んで、私は思わず『ジャングル・ブック』を思い出した。つまり、子どもの頃に教えられたことはずっと残るということと、社会から隔離された状態にあった子どもは、社会に馴染めないということだ。

この物語の主人公(名前は分からないが、ルナールというあだ名で呼ばれるようになる)は、幼い頃にナルダというおばに預けられる。少年は学校にも行かず、ナルダが病気で病院に収容されるまで、彼女の手伝いをして、庭仕事だけをしてきた。その間に、少年はナルダから様々な話を聞かされる。

少年の心にもっともとりついて離れない事柄は、父親は宝石泥棒で、世にも高価なダイアモンドを盗み、追っ手に捕まる前に、少年にそれを飲ませて隠したという話だ。それ以来、少年はずっと人を避け、まわりの人が皆、自分のお腹の中にあるダイアモンドを狙っていると信じているのだった。やがて少年は大人になり、マリーという女性に恋をする。そうしたやり取りの中で、少年は心を開き、全てが良い方向に向かうかと思われるのだが…。

この主人公の少年は、もともと知恵遅れか何かなのか?あるいは、社会から切り離されて育ったために、一般的な知識がないだけなのか?こういった、ある意味特殊な少年の物語を訳す時に、しばしばダニエル・キイスの『アルジャーノンに花束を』のチャーリーのような話し方に訳されてしまう。すると、前述のように、先天的なのか、後天的なのか、よくわからなくなる。この訳文が、普通に訳されていたら、もっと感動したに違いない。このところ、こういった例が多いのが残念だ。

すると、翻訳はよくない。原書で読まなければダメだということになりそうだが、それはそうでもない。たとえ翻訳がまずくても、原作がしっかりしていれば、さほど気にならないのではないだろうか。逆に原作がまずくても、翻訳の力で面白くなるという場合も、まれにあるとは思うが。

だが少なくとも、読者に偏ったイメージを与えてしまうような訳は、やはりあまり歓迎できない。この本の場合、主人公が十分大人であるにも関わらず、子どものよう話し方(物語全体が主人公の語りであるから、余計に気になる)にしたのは、訳者の苦肉の策とは思うが、この主人公の場合、社会から全く隔離されていたわけではなく、仕事もしているわけだから、大人の話し方を知らないわけでもないだろう。そんなところが不自然なのである。

最初の話に戻ると、いかに子どもの頃の経験が大事かということを痛感する話である。よくよく注意して、子どもには接しなければならないということを考えさせられた。
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