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第四の手 


2013.06.15
Sat
05:32

■原書

The Fourth Hand/John Irving (著)
マスマーケット: 352 p ; 出版社: Ballantine Books ; ISBN: 0345463153 ; 1 Ballanti 版 (2003/04/29)

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新薬開発と医療技術の進歩による「奇跡」はニュース性が高い。例外なくマスコミによって大々的に報じられ、小説の格好の題材となる。最近では、フランスで行われた腕の移植手術が話題になった。けっきょくは術後治療に失敗、切断という結果に終わったが、この一件について医療倫理学者はこう語る。心臓や肝臓などの生きるために不可欠な臓器は、うまい具合に体内にあるため目に触れることはない。だが腕は外からはっきり見えるものだし、片腕を失っても間違いなくひとは生きていける、と。しかし、ジョン・アーヴィングは10作目にあたる本小説で、大胆にもその問題を取り上げた。そこには1本の左腕の移植手術をめぐり、提供者、患者、外科医、熱狂的アメフト・ファンが巻き起こす一大騒動が描かれている。

パトリック・ウォリングフォードはニューヨークのテレビジャーナリスト。インドでサーカスの取材中、檻に入ったライオンにかみつかれ左腕を失う。生放送だったため、画面にはその瞬間も笑顔を絶やさない彼の姿が映し出された(ただし、それはどこかうろたえたような微笑だった。見覚えはあるけれど、誰だかはっきり思い出せない相手に出会ったときのような)。これによって、パトリックは「あのライオンの人」として一躍有名になる。

そんなある日、パトリックに腕を移植する話がもちあがる。執刀はボストンのスーパー外科医、ニコラス・M・ザジャック。息子と犬のフンとマラソンに執着を見せる、この風変わりな男はとにかく精力的。世界初の腕の移植手術に意欲満々だ。だが提供者(いや、むしろ提供者の未亡人というべきか)はいくつかの契約条項を求めてきた。手術前にパトリックに会わせること、そして手術後も彼を訪問する権利を与えること…。

アーヴィングは主役も脇役も見事にまとめあげ、ほどよい風刺の利いた洗練された物語を完成した。『The Fourth Hand』は明らかにただの喜劇ではない。「贖罪としての愛」を描いた、深い味わいのある小説である。

The Fourth Hand: A Novel (Ballantine Reader's Circle)/John Irving (著)
ペーパーバック: 352 p ; 出版社: Ballantine Books ; ISBN: 0345449347 ; (2002/05/14)

The Fourth Hand/John Irving (著)
ハードカバー: 316 p ; 出版社: Random House Inc ; ISBN: 0375506276 ; (2001/07/03)



■翻訳書

第四の手/ジョン・アーヴィング (著), 小川 高義
単行本: 395 p ; 出版社: 新潮社 ; ISBN: 4105191101 ; (2002/07)

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『ガープの世界』でその名を世に知らしめて以来、数々の人気小説を生み出しているジョン・アーヴィングが2001年に発表した作品の邦訳。長編10作目にあたる。

物語は突拍子もなく幕を開ける。報道番組のレポーターであるパトリックは、取材中に起きたある事件―― なんと数十秒の間に左手を丸ごと失ってしまうのだ―― から一躍有名人に。しかも、その瞬間はカメラに見事収められ、一部始終が放送される。

テンポのよいストーリー展開で、まるで映画を見ているかのような映像が頭に浮かんでくる。手の移植の第一人者といわれる医者(しかし過去1度しか経験がない)、フンが大好物の犬を飼っているその息子、事故で死んだ夫をパトリックの左手のドナーにと夫が死ぬ前から考える妻など、パトリックの左手の移植を巡って登場するキャラクターたちも魅力だ。また、パトリックの行動を通して、他人の不幸をネタにするテレビ報道の体制を皮肉たっぷりに描いているところも嫌みなく楽しめる。

そして何よりも、下半身にだらしなく、欲情のままに生きてきたダメ人間パトリックが、左手を失ったことをきっかけに、次第に愛や信頼に重きを置くようになる様に心が温まる。意中の女性に愛を告白するも、正直になりすぎて一歩退かれるなど、魔がさした人間の過ちを滑稽に描写するジョン・アーヴィングのテクニックも見事である。(松本芹香)

内容(「MARC」データベースより)
ライオンに手を喰われたTVマン。移植手術を目前に「手」の未亡人が会いにきて…。稀代の女ったらしが真実の愛に目覚めるまでの、迷い多き日々をつぶさに描く、抱腹の純愛小説。



[MY OWN REVIEW]
The Fourth Hand (2001)

ハンサムで稀代のプレイボーイであるテレビのアンカーマンPatirick Wallingfordは、サーカスの取材中にライオンに左手を食いちぎられてしまう。その後、自殺したOtto Clausenの左手を、Dr. Zajackによって移植されるが、移植後1年で再び失ってしまう。移植前に、Ottoの妻Dorisのたっての願いで子どもを作る羽目に陥り、期せずして父親となる。数限りない女性と関係を持ちながらも、真実の愛に目覚めていくPatrickだが、ついに「第四の手」を手に入れる。

Patrickは彼の元妻によれば、「けして大人になれない、いつまでも子どものままの男」である。なるほど言い寄る女性にはけして嫌と言えず、欲しいものは欲しいと単純に行動してしまう男だ。文中に登場するE.B.Whiteの『Charlotte's Web』や『Stuart Little』は、彼の子どもっぽい一面を象徴しているということだろうか。

対するMrs. Clausen(=Doris)は「とことん大人の女性」という設定。いきなり子どもを作って欲しいとPatrickに迫り、その場で事に及んでしまうあたりは、クレージーな女としか見えないが、実は自分の意志をちゃんと持った、しっかりと地に足のついた大人の女性で、彼女は心の底から夫の死を悲しんでいたのである。彼女は左手よりもっと大事な、つまり心底愛していた夫を失ったのだ。夫との間に子どもができなかった彼女は、その夫の片鱗を所有する男に、最後の望みを託したということだろう。

PatrickはDorisを愛するようになるが、それは彼女が多分に母性を持っていたことと、他の女性にない強さをもっていたからかもしれない。彼は無邪気に「愛している」と言うが、彼女は「愛するようにつとめる」と言っているように、自分の気持ちが決定するまでは、けして相手に期待させないという意志の強い女性。子どもを作ったいきさつは仰天ものだが、本来は夫の面影が消えるまで、他の男性は愛することが出来ないという女性だったのだ。

アーヴィングは今回、コメディ&ラブストーリーといった感じの作品を書きたかったようだが、それぞれのエピソードや言い回しなど、十分にコメディの要素があるものの、最後にはコメディをラブストーリーが上回り、「大人の愛の物語」となっている。最後にDorisの真意がわかると、たとえようもなく切なく、胸を打たれる。一見、主人公はPatrickのようだが、実はこの話はMrs. Clausen(=Doris)の物語だったのである。

アーヴィングは小説を書く前に、全ての登場人物の性格を決定しているということだが、この作品でも、それぞれのキャラクターが非常にはっきりしていた。アーヴィング独特の奇怪な世界も健在で、サーカスやどこかに障害がある人(肉体的および精神的にも)など、事欠かない。その代表がDr. Zajackの一家だろう。そういったイメージを象徴する動物(これもお約束)は、Dr. Zajackの犬で、『ホテル・ニューハンプシャー』に登場した犬のソローを彷彿とさせる。

ところで「第四の手」とは一体何だったのか。

それが分かった時、この小説がラブストーリーであることを、深く認識できるだろう。ラストはさすがアーヴィング!といった終わり方で、じっくり時間をかけて読んだ甲斐があったという満足感があった。
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category: ジョン・アーヴィング

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